Scivias 第1部・第2幻視 3章|そこから地獄が成ったことについて


『Scivias』第一部・第二幻視のこの章では、ヒルデガルトが見た「広く深い大きな穴」の意味が、さらに詳しく解き明かされていきます。

その深淵は、あらゆる悪徳の広がりと、善を失うことの深さを宿す地獄として示されます。そこでは、魂を滅びへ導く悪が、最初から恐ろしい姿を見せるのではなく、ときに甘美さや優しさを装いながら近づいてくることが語られます。

そして、ルシファーとその追随者たちが神の光から離れたことによって、彼らのために「外なる闇」が備えられたことが示されます。しかし、ここで語られるのは絶望だけではありません。

ヒルデガルトは、悔い改めることなく神を忘れた者に備えられたゲヘナと、悪に陥りながらも最後には神へ立ち返る者が受ける清めとを区別します。
エゼキエルの言葉を通して響くのは、「立ち返りなさい」という呼びかけです。

悪しき行いを捨て、悔い改めによって神へと向きを変えるなら、その咎が人を滅びへ沈めることはありません。むしろ天使たちはその回復を喜び、人は善き行いを通して、以前よりも深く神を知るようになると語られます。

しかし第二幻視は、そこからさらに人間の最初の堕落へと遡ります。

滅びの深みから現れた悪魔の欺きは蛇へと入り込み、楽園で無垢に生きていたアダムとエヴァへ近づきます。悪魔は巧みな問いかけによって、禁じられた木についてエヴァから知り、彼女を通してアダムをも不従順へと導こうとしました。

ここで描かれるのは、単なる地獄の恐ろしさではありません。

神から離れることによって生じる闇と、そこから再び神へ立ち返ることのできる道。
そして、人間の心へ罪がどのように忍び込み、創造の調和が崩れていったのか。

この章では、地獄・裁き・悔い改め・救い、そしてアダムとエヴァへの誘惑を通して、ヒルデガルトが見た「堕落」と「回復」の意味を辿っていきます。


翻訳方針

このページでは、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン『Scivias』について、コロンビア大学が公開している英語訳を主な底本として、日本語訳を作成しています。
翻訳にあたっては、英語訳の内容と構造をできる限り尊重しながら、単語を機械的に置き換えるのではなく、ヒルデガルトの幻視が持つ荘厳さや象徴性、祈りのような語りの流れが、日本語でも自然に伝わることを大切にしています。
また、『Scivias』には中世キリスト教神学に基づく象徴や独特の表現が数多く登場します。そのため、翻訳本文では原文にない解釈をできるだけ加えず、「ヒルデガルトが何を見て、何を聞き、どのように語ったのか」をまずそのまま受け取れるように整えています。
象徴の意味や神学的背景、現代の私たちがどのように受け取ることができるのかについては、翻訳本文とは分けて、解説ページで詳しく紐解いていきます。
※本ページはラテン語原典からの直接翻訳ではなく、公開されている英語訳をもとにした日本語訳です。

※Scivias (英語版)原文:コロンビア大学https://www.columbia.edu/itc/english/f2003/client_edit/documents/scivias.html


Potcastで優しく解説

※本Potcastと動画は、本記事をもとに、NotebookLMを活用して制作しています。


本文を動画で聞く



美しい天上の花園の奥に大きく口を開けた地獄の深淵が広がり、炎と黒煙の中で魂が呑み込まれていくScivias第二幻視のイメージ
甘美さを装う深淵の口は、魂を欺き、滅びの炎へと引き込んでいく

第3章 そこから地獄が成ったことについて

Message1:魂を貪欲に呑み込み、その内に留め置く地獄について

しかし、あなたに示された広く深い大きな穴は、地獄を表しています。
そこには、あなたが見たとおり、あらゆる悪徳の広がりと、喪失の深さが満ちています。

その入口は、まるで井戸の口のように開き、そこからは火を帯びた煙と激しい悪臭が立ちのぼっています。
なぜなら地獄は、魂を呑み込もうとするその貪欲さのゆえに、まず甘美さと優しさを装って魂に近づき、歪んだ欺きによって、彼らを滅びの責め苦へと導くからです。そこには、黒い煙を噴き上げる燃えさかる炎と、沸き立つような死の悪臭が立ちのぼっています。
これらの恐るべき責め苦は、至高の善に背を向け、それを知ろうとも理解しようともしなかった悪魔と、その追随者たちのために用意されたものです。

それゆえ彼らがあらゆる善から追放されたのは、善を知らなかったからではなく、大いなる高慢のうちに、それを侮り、退けたからなのです。

では、これは何を意味するのでしょうか。

But the pit of great breadth and depth that appeared to you is Hell, having within it, as you see, the breadth of vices and the depth of losses.

It has a mouth indeed like the mouth of a well, emitting a fiery smoke with great stench, because in its voracity to swallow up souls, it shows them sweetness and gentleness, and with perverse deception leads them to the torments of perdition, where rises a burning fire with black smoke pouring out and a boiling, deadly stench;
these dire torments were prepared for the Devil and his followers, who turned away from the Supreme Good, not wishing to know or understand it.

Therefore they are outcast from all good, not because they did not know it, but because in their great pride they despised it.

What does this mean?


天上の光から堕落した天使が地獄の炎と闇へ落ちていくScivias第二幻視「地獄の成立」
高慢によって神から離れた者は、光ではなく外なる闇へと落ちていく

Message2:悪魔が打ち倒されたとき、地獄が生じた

悪魔が打ち倒されたとき、あらゆる苦しみに満ちた「外なる闇」が生じました。
これらの悪しき霊たちは、本来彼らのために備えられていた栄光とは反対に、数多くの刑罰による悲惨へと引き渡され、かつて持っていた輝きとは反対に、最も深い闇に覆われることになったのです。

それは、どのようにして起こったのでしょうか。
高慢な天使が、蛇のように身をもたげて自らを高くしようとしたとき、彼は地獄という牢獄を受けることになりました。なぜなら、誰であっても神に打ち勝つことなど、あり得ないからです。

そもそも、ひとつの胸の中に、二つの心が存在することなどできるでしょうか。
それと同じように、天に二人の神が存在することもあり得ません。

しかし悪魔とその追随者たちは、高慢な思い上がりを自ら選び取りました。
それゆえ彼は、自分のために備えられた地獄の穴を見いだすことになったのです。

そして同じように、彼らの行いをまねる人々もまた、それぞれの行いに応じて、その苦しみを共に受ける者となるのです。

In the casting down of the Devil this exterior darkness, full of all kinds of pains, was created;
for these evil spirits, in contrast to the glory that had been prepared for them, were subject to the misery of many punishments, and in contrast to the brightness they had had, endured the thickest darkness.

How?
When the proud angel raised himself on high like a snake, he received the prison of Hell, because it could not be that anyone should prevail over God.

For how could two hearts possibly exist in one breast?
Likewise, there could not be two gods in Heaven.

But since the Devil and his followers chose proud presumption, therefore he found the pit of Hell prepared for him.

So also the people who imitate them in their actions become sharers of their pains, according to their deserts.


ゲヘナの炎に留まる魂と、悔い改めによって清められ天上の安息へ導かれる魂を対比したScivias第二幻視のイメージ
悔い改めず神を忘れた者にはゲヘナが、神へ立ち返る者には清めと安息への道が残されている

Message3:悔い改めない者にはゲヘナが、救われ得る者には別の責め苦がある

ある魂たちは、すでに滅びの境地にまで至ったため、神を知ることから退けられ、それゆえ、解放の慰めを得ることなく、地獄の苦しみを受けることになります。

しかし一方で、神によって忘却へと委ねられていない者たちは、別のより高い過程を経て、自らが陥った罪の清めを受けます。そしてついには、その束縛が解かれるのを経験し、安息へと導き入れられるのです。
では、これはどのようなことなのでしょうか。

ゲヘナは、心のうちで悔い改めることなく神を忘れた者たちのために備えられています。
しかし、悪しき行いをしたとしても、その悪のうちに最後までとどまらず、ついには嘆きながら神へと立ち返る者たちには、別の責め苦が備えられています。

それゆえ、信仰ある者たちは悪魔から逃れ、神を愛しなさい。悪しき行いを捨て去り、悔い改めの美しさによって、善き行いを飾りなさい。
このことを、わたしによって霊感を受けた、わたしの僕エゼキエルも次のように勧めています――

Some souls, having reached the point of damnation, are rejected from the knowledge of God, and therefore they shall have the pains of Hell without the consolation of deliverance.

But some, whom God has not consigned to oblivion, experience a higher process and undergo purgation of the sins into which they have fallen, and at last feel the loosing of their bonds and are delivered into rest. How is this?

Gehenna is ready for those who have impenitently forgotten God in their hearts, but other torments for those who, though they perform bad works, do not persevere in them to the end, but at last, groaning, look back to God.

For this reason let the faithful flee from the Devil and love God, casting away evil works and adorning good works with the beauty of penitence;
as My servant Ezekiel, inspired by Me, urges, saying:


罪の闇から離れ、悔い改めによって清められた魂が天使に導かれ、光に満ちた天上の都へ向かうScivias第二幻視のイメージ
悪しき行いを捨て、悔い改めによって神へ立ち返る者には、救いへの道が開かれる

Message4:このことについてのエゼキエルの言葉

「立ち返りなさい。そして、あなたがたのすべての咎を悔い改めなさい。
そうすれば、咎があなたがたを滅びへ導くことはない。」
(エゼキエル書 18章30節)

これは、次のような意味です。
おお、人々よ。
これまで罪の中に身を沈めてきたあなたがたよ、自らが「キリスト者」と呼ばれる者であることを思い起こし、救いの道へと立ち返りなさい。 かつて数えきれないほどの悪徳を抱え、多くの罪を犯してきたとしても、今こそ、悔い改めの奔流のうちに、あなたがたのすべての行いを改めなさい。

このようにして、あなたがたが悪しき習慣から立ち上がるなら、かつてあなたがたを汚していたその咎が、死の滅びの深みへとあなたがたを沈めることはありません。
なぜなら、あなたがたは救いの日に、その咎を自ら投げ捨てたからです。

それゆえ、天使たちはあなたがたのために喜ぶでしょう。
なぜなら、あなたがたは悪魔を捨てて神へと走り寄り、古き誘惑者の嘲りに耐えていた頃よりも、善き行いを通して、神をいっそう深く知るようになったからです。

“Be converted, and do penance for all your iniquities;
and iniquity shall not be your ruin” [Ezekiel 18:30].

That is to say:
O you people!
who till now have wallowed in sin, remember your name of Christians, be converted to the way of salvation, and perform all your works in a gush of penitence, who previously had innumerable vices and committed many crimes.

Thus as you rise from your evil habits, that iniquity by which you had been soiled will not sink you deep in the ruin of death, since you cast it off in the day of your salvation.

Therefore the angels will rejoice over you, because you have abandoned the Devil and run to God, knowing Him better in your good actions than you did when you endured the mockery of the ancient seducer.


光に満ちた楽園でアダムとエヴァが禁じられた木のそばに立つ一方、蛇に入り込んだ悪魔の闇が迫るScivias第二幻視のイメージ
悪魔の欺きは蛇を通して楽園へ入り込み、無垢な人間を惑わそうとした

Message5:蛇を通してアダムを欺いた悪魔の策略

「忌まわしい雲が深い穴から広がり、血管のような形をした欺きに満ちた姿に触れた」というのは、滅びの深みから悪魔の欺きが現れ、人間を惑わすために、すでに欺こうとする意図の罪をその内に宿していた蛇へと入り込んだことを意味しています。

では、どのようにしてでしょうか。
悪魔は楽園にいる人間を見たとき、激しい嫌悪を抱いて、こう叫びました。
「ああ! この真の至福の住まいで、私に触れてくる者は誰なのか!」
そして彼は、自らの内にある悪意を、まだどの被造物のうちにも完全には実現できていないことを悟りました。しかし、アダムとエヴァが子どものような無垢さをもって喜びの園を歩いているのを見ると、大いなる驚きとともに立ち上がり、蛇を通して彼らを欺こうとしたのです。

なぜでしょうか。
それは悪魔が、あらゆる動物の中で蛇が最も自分に似ていると見抜き、自らの姿では公然と成し遂げることのできないことを、蛇の欺きによって成し遂げようとしたからです。

そして悪魔は、アダムとエヴァが魂においても身体においても禁じられた木から離れているのを見ると、彼らが神の命令に従っていることを悟りました。
そして、彼らが歩み始めたその最初の行いにおいてこそ、自分は容易に彼らを倒すことができると見抜いたのです。

That a loathsome cloud spread out from the pit and touched a deceitful, vein-shaped form means that from the bottom of perdition the Devil’s fraud came forth and invaded the serpent, who already bore within itself the crime of fraudulent intention, in order to deceive humanity.

In what way?
Because, when the Devil saw Man in paradise, he cried out with great aversion, saying, “Oh! who touches me in the mansion of true beatitude?”
And so he knew that he had not yet perfected in any creature the malice he had within himself, but seeing Adam and Eve walk with childlike innocence in the garden of delight, with great wonder he rose up to deceive them through the serpent.

Why?
Because he understood that the serpent more than any other animal resembled him and was eager to accomplish by its deceitfulness what he could not do openly in his own form.

So when he saw Adam and Eve turn away in soul and body from the forbidden tree, he understood that they were obeying a divine precept, and that in the first work they began he could very easily throw them down.


楽園でエヴァがアダムに禁じられた実を差し出し、その背後で蛇と悪魔が欺きを働き、遠景に楽園からの追放が描かれたScivias第二幻視のイメージ
悪魔はエヴァを惑わせ、その言葉を通してアダムを不従順へと導いた

Message6:悪魔がその木が禁じられていると知ったのは、エヴァの返答によってのみであった

悪魔は、巧妙な問いかけを用い、彼らの返答によって確かめるまでは、その木が彼らに禁じられていることを知りませんでした。

それゆえ、「光り輝く領域で、彼は白い雲に向かって吹きつけました。」
そしてその白い雲は、「美しい人間の姿から生じ、その内に無数の星々を宿していました。」
これは、喜びに満ちた楽園において、エヴァが蛇の誘惑を通して悪魔に侵され、自らの堕落へと導かれたことを意味しています。エヴァの魂はまだ無垢でした。彼女は無垢なるアダムから取り出され、その身体のうちには、神の定めによって輝く全人類の大いなる群れを宿していたからです。

なぜ、このようなことが起こったのでしょうか。
それは悪魔が、女性の受けやすさのほうが、男性の強さよりも容易に征服できると考えたからです。
また彼は、アダムがエヴァへの聖なる愛に激しく燃えていることを見抜いていました。そのため悪魔は、もしエヴァを打ち倒すことができれば、アダムは彼女の言うことに従うだろうと考えたのです。
それゆえ悪魔は、「白い雲と人間の姿の両方を、その領域から追い出しました。」
すなわち、あの古き誘惑者は、その欺きによってエヴァとアダムを祝福の座から追い出し、滅びの闇へと突き落としたのです。

では、どのようにしてでしょうか。
悪魔はまずエヴァを惑わせ、彼女がアダムに優しく語りかけ、親しく働きかけることによって、その同意を得るよう仕向けました。
なぜなら、エヴァはアダムの肋骨から造られたため、他のどの被造物よりも、アダムを不従順へと導き得る存在であったからです。

このように、男性が女性を退けることなく、その言葉を容易に受け入れるなら、女性はたちまち男性を倒してしまうのです。

For he would not have known that this tree was forbidden them unless he had proved it by guileful questioning and by their answers.

Wherefore in that bright region he blew upon a white cloud;
which had come forth from a beautiful human form and contained within itself many and many stars because, in that place of delight, Eve — whose soul was innocent, for she had been raised out of innocent Adam, bearing in her body the whole multitude of the human race, shining with God’s preordination — was invaded by the Devil through the seduction of the serpent for her own downfall.

Why was this?
Because he knew that the susceptibility of the woman would be more easily conquered than the strength of the man;
and he saw that Adam burned so vehemently in his holy love for Eve that if he, the Devil, conquered Eve, Adam would do whatever she said to him. Hence the Devil cast out both the cloud and the human form from that region because that ancient seducer cast out Eve and Adam by his deception from the seat of blessedness and thrust them into the darkness of destruction.

How?
By first misleading Eve, so that she might flatter and caress Adam and thus win his assent, since she more than any other creature could lead Adam to disobedience, having been made from his rib.

Thus woman very quickly overthrows man, if he does not hate her and easily accepts her words.



一節と祈りの「お知らせ」を受信箱へ

毎朝6時、今日の「本日の聖書の言葉」と短い祈りの更新を、迷わず受け取れるお知らせメールをお届けします。
読み逃しを防ぎ、朝の数分で心を整える習慣に。
さらに不定期で、ハーブやティータイムの情報、ヒルデガルドの幻視書のやさしい解説も届きます。
今朝から、静けさの入口を受信箱に。


第2幻視:第1章-第2章に戻る

第二幻視の始まりへ戻り、忠実な天使たちの光と、ルシファーの高慢が堕落へ至るまでの流れをもう一度辿ってみましょう。

第2幻視:次の章へ

※現在制作中、、、


『Scivias』:目次ガイドへ

『Scivias』は、ヒルデガルトの幻視とその解釈を通して、創造と救い、そして秩序を辿る代表作です。
象徴的なヴィジョンは、理解を急がず順を追って読むほど、聖書の理解と祈りの輪郭を静かに深めていきます。
まずは全体像を掴むためにガイド(目次)へ進み、序文で呼吸を整えてから、本編へお入りください。


感想ノート

このメッセージに触れて気づいたことや感じたことを
ぜひコメントに残してくださいね。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。

*Amazonプライムで快適に*

*Amazonセール情報*


Salon Rose moonをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む