『Scivias』第一部・第二幻視では、創造の光のただ中で、神への愛にとどまった天使たちと、自らの美しさと力に高ぶって神から離れていった者たちの姿が描かれていきます。
ヒルデガルトが幻視の中で見た、非常に明るく輝く無数の「生ける灯火」。
それらは、神によって創造されたとき、高慢によって自らを高くしようとはせず、神への愛と正義のうちに堅くとどまった天上の霊たちを表していました。
しかし、その同じ天上の世界において、ルシファーは自らに与えられた美しさと力を見つめるうちに高慢を抱き、神と並ぶように自らも輝くことを望みます。彼の思いに同意した天使たちもまた反逆へと加わり、やがて天上の栄光から退けられていきました。
ここで語られるのは、単なる天使たちの起源やルシファーの堕落だけではありません。
与えられた光を神へと返すのか、それとも自らのものとして誇るのか。
その選択によって、同じように輝いていた天使たちの道が大きく分かれていくのです。
このページでは、まず「天使たちの由来」を通して、生ける灯火が象徴する神への忠実な愛を見つめ、続いて「ルシファーの堕落」を通して、高慢がどのように光を闇へと変えていったのか、そしてなぜその反逆が神の正しい裁きによって退けられたのかを辿っていきます。
翻訳方針
このページでは、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン『Scivias』について、コロンビア大学が公開している英語訳を主な底本として、日本語訳を作成しています。
翻訳にあたっては、英語訳の内容と構造をできる限り尊重しながら、単語を機械的に置き換えるのではなく、ヒルデガルトの幻視が持つ荘厳さや象徴性、祈りのような語りの流れが、日本語でも自然に伝わることを大切にしています。
また、『Scivias』には中世キリスト教神学に基づく象徴や独特の表現が数多く登場します。そのため、翻訳本文では原文にない解釈をできるだけ加えず、「ヒルデガルトが何を見て、何を聞き、どのように語ったのか」をまずそのまま受け取れるように整えています。
象徴の意味や神学的背景、現代の私たちがどのように受け取ることができるのかについては、翻訳本文とは分けて、解説ページで詳しく紐解いていきます。
※本ページはラテン語原典からの直接翻訳ではなく、公開されている英語訳をもとにした日本語訳です。
※Scivias (英語版)原文:コロンビア大学https://www.columbia.edu/itc/english/f2003/client_edit/documents/scivias.html
Potcastで優しく解説
※本Potcastと動画は、本記事をもとに、NotebookLMを活用して制作しています。
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第1章 天使たちの由来について
Message1:不義の衝動は、祝福された天使たちを神への愛と賛美から引き離すことはない
いかなる不義の衝動も、忠実な献身をもって神に従い、神への深い思いによって、ふさわしい愛に燃えている者たちを、天上の至福の栄光から恐れ退かせることはありません。
一方、ただうわべだけで神に仕える者たちは、より高いものへ進むことができないばかりか、自分が所有していると誤って思い込んでいたものからさえ、正しい裁きによって追い出されてしまいます。
このことを示しているのが、あなたが見た非常に明るく輝く、無数の「生ける灯火」です。
それらは、天上の霊たちからなる大いなる軍勢を表しています。彼らは至福の命のうちに輝き、大いなる美しさと装いのうちに生きています。なぜなら、神によって創造されたとき、彼らは高慢によって自らを高くしようとはせず、神への愛のうちに堅くとどまったからです。
そして彼らが火のような輝きを受け、曇りのない光彩を帯びるようになったのは、ルシファーとその追随者たちが、至高なる創造主に反逆しようとしたときでした。ルシファーとその追随者たちが堕落していく中で、忠実な天使たちは神への熱意に燃え、神の愛のうちに目覚めている者として自らを包みました。それに対して、神を知ろうとしなかった者たちは、無知という鈍い眠りを自ら抱きしめたのです。
では、それはどのように現れたのでしょうか。
悪魔が堕落したとき、神とともに正しさのうちにとどまった天上の霊たちから、大いなる賛美がほとばしりました。彼らは最も鋭いまなざしをもって、神がその力において揺るぐことなく、いかなる変化によっても変わることのない御方であり、どのような戦士であっても決して神に打ち勝つことはできないと悟っていたからです。
それゆえ彼らは、神への愛に燃え、正義のうちに堅くとどまり、あらゆる不義の塵を退けたのです。
No impulse of injustice makes those withdraw in terror who follow God with faithful devotion and burn with worthy love through affection for Him, from the glory of heavenly beatitude;
while they who serve God merely in pretence not only fail to advance to greater things but, by just judgment, are cast out from the things they erroneously suppose they possess.This is shown by the great multitude of very bright living lamps;
they are the vast army of heavenly spirits, shining in the blessed life and living in great beauty and adornment, because when they were created by God they did not grasp at proud exaltation but strongly persisted in divine love.For, receiving fiery brilliance, they acquired an unclouded splendor, because when Lucifer and his followers attempted to rebel against the supreme Creator, they, with zeal for God in his and his followers’ downfall, clothed themselves in the vigilance of divine love, while the others, not wishing to know God, embraced the torpor of ignorance.
In what way?
At the fall of the Devil great praise burst forth from these angelic spirits who persevered in rectitude with God, because with keenest sight they knew that God continues immovable, without any change of any mutability in His power, so that no warrior can ever conquer Him.And thus, burning in His love and persevering in righteousness, they despised all the dust of injustice.

第2章 ルシファーの堕落について
Message1:ルシファーは、その美しさと力への高慢ゆえに天から追放された
しかしルシファーは、その高慢ゆえに天上の栄光から追放されました。
彼は創造されたそのとき、自らの美しさにも力にも、何ひとつ欠けているところがないと感じるほど偉大な存在でした。
それゆえ彼は、自らの美しさを見つめ、自らの力の大きさを思い巡らすうちに、高慢を見出しました。
その高慢は彼に、「自分には始めたことを成し遂げる力があるのだから、自分の望むことを始めることができる」と思わせたのです。
そして彼は、自分が住むことのできると思った場所を見つけると、そこで自らの美しさと力を示したいと望み、神について心の中でこう言いました。
「私は、あの場所で、神がここで輝いておられるのと同じように、私も輝きたい!」
すると彼のすべての軍勢もこれに同意し、こう言いました。
「あなたが望むことを、私たちも望みます。」
こうして彼は、高慢によって心を高ぶらせ、自らが思い描いたことを実現しようとしました。
しかしそのとき、主の燃えるような熱情が、黒い炎のように彼へと及び、ルシファーとそのすべての従者を打ち落としました。
そのため彼らは、輝く者である代わりに燃えさかる者となり、美しい者である代わりに黒く変わってしまったのです。
では、なぜこのようなことが起こったのでしょうか。。
But Lucifer, who because of his pride was cast forth from celestial glory, was so great at the moment of his creation that he felt no defect either in his beauty or in his strength.
Hence when he contemplated his beauty, and when he considered in himself the power of his strength, he discovered pride, which promised him that he might begin what he wished, because he could achieve what he had begun.
And, seeing a place where he thought he could live, wanting to display his beauty and power there, he spoke thus within himself about God:
“I wish to shine there as He does here!”
And all his army assented, saying,
“What you wish we also wish.”
And when, elated with pride, he tried to achieve what he had conceived, the jealousy of the Lord, reaching out in fiery blackness, cast him down with all his retinue, so that they were made burning instead of shining and black instead of fair.Why did this happen?

Message2:神が彼らを打ち倒されなかったなら、神は不正義であった
もし神が、彼らの僭越な思い上がりを打ち倒されなかったなら、神ご自身が不正義であったでしょう。
なぜならそれは、神性の完全なる一体性を分けようと望んだ者たちを、神がかえって受け入れ、慈しまれることになってしまうからです。
しかし神は彼らを打ち倒し、その不敬を無に帰されました。
同じように神は、ご自身に逆らおうとする者すべてを、その栄光の御前から退けられるのです。
このことを、わたしの僕ヨブも次のように示しています――
If God had not cast down their presumption, He would have been unjust, since He would have cherished those who wished to divide the wholeness of divinity.
But He cast them down and reduced their impiety to nothing, as He removes from the sight of His glory all who try to oppose themselves to Him, as My servant Job shows when he says:

Message3:このことについてのヨブの言葉
ヨブはこのことについて、こう語っています――
「悪しき者の灯火は消え、洪水が彼らを襲う。
そして神は、御怒りの苦しみを彼らに分かち与えられる。彼らは風の前のもみ殻となり、つむじ風に散らされる火花のようになる。」
(ヨブ記11章17〜18節)
これは、偽りの繁栄から生じる放縦な悪のあからさまな汚れを意味しています。
それは、神を畏れず、かえって歪んだ怒りのうちに神を侮る者たちの、肉の意志に刻まれた印のようなものです。彼らは、誰かが自分たちに打ち勝つことがあるなどとは認めようとせず、その激しい怒りの炎によって、自分たちに逆らうものすべてを焼き尽くそうとします。
しかし、神の報いの時が来ると、その汚れは塵のように踏みつけられます。
そして至高の裁きによって、この不敬な者たちは怒りのうちに打ち倒され、天の下にあるすべての者から退けられることになります。なぜなら、彼らは神にも人にも害を及ぼす存在だからです。
それゆえ、神が彼らの望むものを与えることを許されないため、彼らは人々の間へ散らされ、狂気の怒りのうちに苦しみ悶えるのです。
彼らは、神が彼らにむさぼることを許されないものを手に入れようと、激しく燃え続けるからです。
そして、このようにして神から離れていくことで、彼らはまったく無益な存在となり、神にも人にも何ひとつ善をなすことができなくなります。
神の先見のまなざしによって、彼らは命の種から切り離されるのです。
そのため彼らは悲惨へと引き渡され、悪しき評判の味気ない味わいの中で、自らをすり減らしていきます。
なぜなら、彼らは聖霊から降り注ぐ雨を受けることがないからです。
“The lamp of the wicked shall be put out and a deluge shall come upon them;
and He shall distribute the sorrows of His wrath.They shall be chaff before the face of the wind, and sparks scattered by the whirlwind” [Job 11:17-18].
This means the flagrant filth of wanton wickedness that emerges from false prosperity, like a distinguishing mark on the carnal will of those who do not fear God but spurn Him in perverse rage, disdaining to know that anyone can conquer them, while in the fire of their ferocity they want to consume whatever they oppose.
In the hour of God’s vengeance this filth will be trodden underfoot like dirt;
and by the supreme judgment these impious ones will be cast down in wrath by all who are under heaven, because they are harmful both to God and to humans.Therefore, since God does not allow them to have what they want, they are scattered everywhere among people, tormented by pain in the rage of their madness, because they burn to possess what God does not allow them to devour.
And since they withdraw in this way from God, they become entirely useless, able to do nothing good for either God or humanity, cut off from the seed of life by the foreseeing eye of God’s contemplation.
For which reason they are given over to misery, wasting themselves in the flat taste of evil fame, since they do not receive the downpouring rain of the Holy Spirit.
この小さな言葉が、どこかの心に静かな平和をもたらしますように。
よろしければ、周りの方と分かち合っていただけたり、必要としている方へそっと届けていただけると嬉しいです。
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『Scivias』:目次ガイドへ
『Scivias』は、ヒルデガルトの幻視とその解釈を通して、創造と救い、そして秩序を辿る代表作です。
象徴的なヴィジョンは、理解を急がず順を追って読むほど、聖書の理解と祈りの輪郭を静かに深めていきます。
まずは全体像を掴むためにガイド(目次)へ進み、序文で呼吸を整えてから、本編へお入りください。
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