『Scivias』第一部・第一幻視は、鉄の色をした大いなる山と、その頂に座す、目を眩ませるほどの栄光に包まれた御方から始まります。
山のふもとには全身を無数の目に覆われた像が立ち、その前には控えめな衣と白い靴を身につけた幼子が現れます。そして玉座の御方から放たれた多くの「生ける火花」が、彼らの周囲を甘美に飛び巡っていきます。
ヒルデガルトは、この壮大な光景の一つひとつに意味があることを示します。
鉄の山は、いかなる変化にも揺るがない神の永遠の王国を。
無数の目を持つ像は、謙遜のうちに神の王国を見つめる主への畏れを。
幼子は、誇りを求めず神の御子の足跡に従う霊の貧しさを。
そして山に開かれた数多くの窓は、人間の行いも、その内にある意図も神の知識から隠れることはないという真理を表しています。
このページでは、第一幻視に示された象徴を四つの節に沿って辿りながら、神の王国の揺るぎなさ、主への畏れ、霊の貧しさ、そして真理の道を歩むことの意味を読み解いていきます。
翻訳方針
このページでは、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン『Scivias』について、コロンビア大学が公開している英語訳を主な底本として、日本語訳を作成しています。
翻訳にあたっては、英語訳の内容と構造をできる限り尊重しながら、単語を機械的に置き換えるのではなく、ヒルデガルトの幻視が持つ荘厳さや象徴性、祈りのような語りの流れが、日本語でも自然に伝わることを大切にしています。
また、『Scivias』には中世キリスト教神学に基づく象徴や独特の表現が数多く登場します。そのため、翻訳本文では原文にない解釈をできるだけ加えず、「ヒルデガルトが何を見て、何を聞き、どのように語ったのか」をまずそのまま受け取れるように整えています。
象徴の意味や神学的背景、現代の私たちがどのように受け取ることができるのかについては、翻訳本文とは分けて、解説ページで詳しく紐解いていきます。
※本ページはラテン語原典からの直接翻訳ではなく、公開されている英語訳をもとにした日本語訳です。
※Scivias (英語版)原文:コロンビア大学https://www.columbia.edu/itc/english/f2003/client_edit/documents/scivias.html
Potcastで優しく解説
※本Potcastと動画は、本記事をもとに、NotebookLMを活用して制作しています。
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第1章 神の国の力強さと愛徳について
Message1:神の永遠の王国の力と安定性
あなたが見ている鉄の色をした大いなる山は、神の永遠の王国の力強さと揺るぎない安定を象徴しています。
それは、いかなる移ろいや変化によっても、決して滅ぼされることのないものです。
そして、その山の上に、あなたの目を眩ませるほどの大いなる栄光のうちに座しておられる方は、祝福の王国にあって、衰えることのない平安の輝きのうちに、天上の神性をもって全世界を治めておられる方です。
しかし、その方を人間の心が理解し尽くすことはできません。
また、その方の両側に、驚くほど広く長い翼のような、柔らかな影が伸びているのは、戒めにおいても懲らしめにおいても、言葉では言い表すことのできない神の正義が、甘美で穏やかな守りを示しながら、真の公平を揺るぎなく貫き続けていることを表しています。
As you see, therefore, the great mountain the color of iron symbolizes the strength and stability of the eternal Kingdom of God, which no fluctuation of mutability can destroy;
and the One enthroned upon it of such great glory that it blinds your sight is the One in the kingdom of beatitude Who rules the whole world with celestial divinity in the brilliance of unfading serenity, but is incomprehensible to human minds.
But that on each side of him there extends a soft shadow like a wing of wonderful breadth and length shows that both in admonition and in punishment ineffable justice displays sweet and gentle protection and perseveres in true equity.

第2章 愛について
Message1:主を畏れる心について
そして、その方の御前、山のふもとには、四方すべてに目を持つ像が立っています。
これは、「主への畏れ」が、謙遜のうちに神の御前に立ち、神の王国を見つめていることを表しています。
それは、善く正しい意図の明澄さに包まれながら、人々の間でその熱心さと揺るぎない堅固さを働かせているのです。
そして、その無数の目のために、あなたはその像に人の姿を見分けることができません。
なぜなら、その鋭い観想のまなざしによって、人が心の倦怠のうちにしばしば陥る、神の正義を忘れてしまうことを退けているからです。
そのため、弱く死すべき人間のいかなる探究も、その絶えず見守るまなざしから逃れることはありません。
And before him at the foot of the mountain stands an image full of eyes on all sides.
For the Fear of the Lord stands in God’s presence with humility and gazes on the Kingdom of God, surrounded by the clarity of a good and just intention, exercising her zeal and stability among humans.
And thus you can discern no human form in her on account of those eyes.
For by the acute sight of her contemplation she counters all forgetfulness of God’s justice, which people often feel in their mental tedium, so no inquiry by weak mortals eludes her vigilance.

第3章 心の貧しい者を守ることについて
Message1:霊において貧しい者たちについて
そして、この像の前には、もう一つの像、すなわち幼子の姿が現れます。
その子は、落ち着いた色のチュニックをまとい、白い靴を履いていました。
これは、主への畏れが先に立つとき、霊において貧しい者たちがそれに従うことを示しています。
というのも、主への畏れは、霊の貧しさという幸いに、へりくだった献身をもって堅く結ばれているからです。
この霊の貧しさは、誇りや心の高ぶりを求めず、むしろ心の単純さと慎み深さを愛します。
また、自らの正しい行いを自分のものとはせず、神に帰しながら、つつましい従順のうちに、いわば落ち着いた色のチュニックをまとい、神の御子の穏やかな足跡に忠実に従っているのです。
その頭の上には、あの山の上に座しておられる方から、あなたがその顔を見ることができないほどの栄光が降り注いでいます。
なぜなら、すべての被造物を支配しておられる方が、その訪れの大いなる光輝によって、この幸いに力と強さを授けておられるからです。
しかし、弱く死すべき人間の思いは、その御心を理解することができません。
なぜなら、天の富を持つその方ご自身が、へりくだって貧しさに身を委ねられたからです。
And so before this image appears another image, that of a child, wearing a tunic of subdued color but white shoes.
For when the Fear of the Lord leads, they who are poor in spirit follow;
for the Fear of the Lord holds fast in humble devotion to the blessedness of poverty of spirit, which does not seek boasting or elation of heart, bur loves simplicity and sobriety of mind, attributing its just works not to itself but to God in pale subjection, wearing, as it were, a tunic of subdued color and faithfully following the serene footsteps of the Son of God.Upon her head descends such glory from the One enthroned upon that mountain that you cannot look at her face;
because He Who rules every created being imparts the power and strength of this blessedness by the great clarity of His visitation, and weak, mortal thought cannot grasp His purpose, since He Who possesses celestial riches submitted himself humbly to poverty.
Message2:神を畏れ、霊の貧しさを愛する者は、徳の守り手である
そして、あの山の上に座しておられる方から、多くの生ける火花が放たれ、それらは大いなる甘美さをもって、あの像たちのまわりを飛び巡っています。
これは、全能の神から、きわめて力強い多くの徳が湧き出て、神の栄光のうちに火を放っていることを意味しています。
そしてそれらは、真に神を畏れ、誠実に霊の貧しさを愛する者たちを、熱烈に抱きしめ、引き寄せ、助けと守りをもってその周囲を取り囲んでいるのです。
But from the One Who is enthroned upon that mountain many living sparks go forth, which fly about those images with great sweetness.
This means that many exceedingly strong virtues come forth from Almighty God, darting fire in divine glory;
these ardently embrace and captivate those who truly fear God and who faithfully love poverty of spirit, surrounding them with their help and protection.

第4章 神には何ひとつ隠せないということについて
Message1:人間の行いの意図は、神の知識からは隠れない
それゆえ、あなたはこの山の中に多くの小さな窓を見ます。
その窓の中には人間の頭が現れており、あるものはくすんだ色をし、またあるものは白く輝いています。
これは、いと高く、深く、そして明晰なる神の知識のうちでは、人間の行いの意図は、決して隠すことも覆い隠すこともできないということを示しています。
そこにはしばしば、生ぬるさと純粋さの両方が現れます。
なぜなら人は、ある時には罪のうちに眠り込み、心にも行いにも倦み疲れ、またある時には目を覚まし、誉れのうちに警醒を保つからです。
Wherefore in this mountain you see many little windows, in which appear human heads, some of subdued color and some white.
For in the most high and profound and perspicuous knowledge of God the aims of human acts cannot be concealed or hidden.
Most often they display both lukewarmness and purity, since people now slumber in guilt, weary in their hearts and in their deeds, and now awaken and keep watch in honor.
Message2:この件についてのソロモンの言葉
このことについて、ソロモンは次のように語っています。
「怠惰な手は貧しさを招くが、勤勉な者の手は富をもたらす。」
(箴言 10章4節)
これはつまり、正義を行おうとせず、悪を避けようともせず、自らが負うべき務めを果たそうともせず、幸いへと導く驚くべきわざを前にしてなお怠惰にとどまる者は、自らを弱くし、貧しくしてしまうという意味です。
しかし、救いのための力強いわざを行い、真理の道を走り続ける者は、
湧きあがる栄光の泉を得て、それによって地上にも天にも、自らのために最も尊い富を蓄えるのです。
それゆえ、聖霊による知識を持ち、信仰の翼を備えている者は、わたしのこの戒めを軽んじてはなりません。
むしろそれを味わい、抱きしめ、そして魂のうちに受け入れなさい。
Solomon bears witness to this for Me, saying:
“The slothful hand has brought about poverty, but the hand of the industrious man prepares riches” [Proverbs 10:4];
which means, a person makes himself weak and poor when he will not work justice, or avoid wickedness, or pay a debt, remaining idle in the face of the wonders of the works of beatitude.But one who does strong works of salvation, running in the way of truth, obtains the upwelling fountain of glory, by which he prepares himself most precious riches on earth and in Heaven.
Therefore, whoever has knowledge in the Holy Spirit and wings of faith, let this one not ignore My admonition but taste it, embrace it and receive it in his soul.
この小さな言葉が、どこかの心に静かな平和をもたらしますように。
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『Scivias』は、ヒルデガルトの幻視とその解釈を通して、創造と救い、そして秩序を辿る代表作です。
象徴的なヴィジョンは、理解を急がず順を追って読むほど、聖書の理解と祈りの輪郭を静かに深めていきます。
まずは全体像を掴むためにガイド(目次)へ進み、序文で呼吸を整えてから、本編へお入りください。
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