「“救い”とは誰の力で、どこから訪れるものなのだろう?」
罪を背負う人間、そしてその人間をあえて救おうとした神の子。
この壮大な愛の意志に、私たちはどう応答しているでしょうか?


Message 14 :人間を救えるのは、神の御子ただ一人
本文
罪のうちに宿り、肉の重さを抱えて苦しむ人間を、悪魔の力から救い出すことができるのは──
罪の中に生まれた人間でもなく、肉体を持たない天使でもありません。
ただひとり、罪を持たず、純粋で汚れなき肉体をもって世に来られた御方──
その受難によって人間を贖われた、わたしの御子だけが、真に人間を救うことができたのです。
ですから、たとえ人間が罪のうちに生まれたとしても──
彼らが忠実にわたしの天の王国を求めるならば、わたしは彼らをその王国に迎え入れるのです。
なぜなら、どのような悪も、わたしの選んだ者をわたしのもとから奪うことはできないからです。
そのことを、知恵(ソフィア)は証ししているのです──。
キーワード解説
🔹 1.「罪のうちに宿る人間」
- ここでいう「罪」とは、アダムの堕罪以降、人間が生まれながらに背負っている“原罪”を指します。
- ヒルデガルトはこの状態を「肉の重さ」「罪にまみれる」と表現し、人間自身の力では悪魔の支配から抜け出せないことを明確にしています。
- この認識は、救いは“外側から来る光”でなければならないという構造を導きます。
🔹 2. 「肉体を持たない天使は救い得ない」
- これは霊的に清い存在であっても、“人間の苦しみ=肉体を持つ者の苦しみ”を共にすることができないという限界を示します。
- つまり、人間の救いには“人間であること”と“罪を持たないこと”の両方が必要であるという
- 神学的な要請がここに表れています。
🔹 3. 「罪なき御方の受難」
- 唯一、人間の姿をとりながらも罪を持たなかった御子――
その受難(パッション)によってこそ、人間は悪魔の力から贖われたのです。 - ここでの「贖い(redemption)」は、取引や償いではなく、愛による完全な身代わりを意味します。
- ヒルデガルトはこの犠牲を、「神が人類を完全に救うための唯一の方法」として強調しています。
🔹 4. 「忠実に神の王国を求める者」
- たとえ罪のうちに生まれたとしても、心から神を求め、信仰を持ち続ける者には救いがあると語られます。
- これはヒルデガルトにとって、「自由意志と信仰の姿勢が救いに応える鍵である」という視点を反映しています。
- 人間の不完全さを責めるのではなく、意志の方向性と信仰の誠実さを重視する教えです。
🔹 5. 「わたしの選んだ者は奪われない」
- 「選ばれた者(My elect)」とは、神の知恵と愛によって見い出された魂たちを指します。
- ここでは、どれほど悪がはびこっても、神の選びは不変であり、その守りは絶対であるという霊的真理が語られています。
- これは同時に、信仰者に対する安心と励ましのメッセージでもあります。
Message 15 :知恵の言葉
part 1:「義なる魂と失われた純粋さ」
本文
「義なる者たちの魂は神の御手のうちにあり、死の苦しみは彼らに触れない」
(知恵の書 3章1節)
この言葉が意味するのは、正しさの道を信仰と愛情をもって歩む魂たちは、天の助け手によって支えられているということです。
彼らは、義を極めながら天を目指して善を行うため、たとえ試練にさらされようとも、滅びの苦しみに打ち砕かれることはありません。
なぜなら、真なる光が彼らを神への畏れと愛において強めてくれるからです。
しかし──
アダムとエヴァが楽園から追放された後、彼らは子を宿し、生むという営みの働きを自らのうちに知るようになりました。
そして、不従順から死に至る道に落ちたとき、彼らは「罪を犯せる」ということを知り、その甘さに触れてしまったのです。
本来その営みは、子どもを愛し望む気持ちによって与えられた神の正しき制度であるべきものでした。
ところが、悪魔のささやきによって、それは 「“欲望”と結びつくものへと変えられてしまった」のです。
つまり──
命を生み出すという純粋な行為は、罪へと堕ち、無垢さを失ってしまったのです。
このような堕落は、悪魔の誘いなくしては起こり得ませんでした。
彼はこのために矢(誘惑)を放ち、人間の意識にささやきを吹き込んだのです。
キーワード解説
🔹 1.「義なる者の魂は神の御手のうちにある」
- 知恵の書からの引用であり、神の正義に生きる者は、死の恐れさえ超える守りを得ているという信仰の宣言です。
- ここでの“義なる者”とは、行いと信仰の両方において誠実であろうと努める魂を意味します。
- ヒルデガルトはこれを、“善を選び続けようとする意志そのもの”と結びつけて語ります
🔹 2. 「天の助け手による支え」
- この「助け手」は天使とも、聖霊とも、キリストの光そのものとも解釈できます。
- 神に従おうとする魂には、見えない霊的な援助が絶えず注がれているという安心のメッセージです。
- 善を選び続ける努力は、決して孤独ではないのです。
🔹 3. 「子を産む働きを知ったアダムとエヴァ」
- エデンを追われた人類が、“命を継ぐ”という神聖な使命を体験として知るようになった場面です。
- この“知る”は単なる生理的理解ではなく、霊的・倫理的責任を伴った新たな現実への目覚めを指しています。
🔹 4. 「罪の甘さを知った」
- アダムとエヴァが“罪を犯せる”ことを知った後、彼らはその“甘さ”に触れてしまいました。
- この「甘さ」は、本来神が意図した愛と創造の営みを、欲望によって歪めてしまう危険を象徴します。
- 欲望そのものよりも、その使い方・方向性に霊的な責任があるという警告です。
🔹 5. 「神の制度を欲望へと転換してしまった」
- 性は神による制度であり、本来は子どもへの愛と創造の意志に基づくものでした。
- しかし、悪魔の誘惑によりそれが“快楽のためのもの”へと堕落したと描かれます。
- これはヒルデガルトにとって、神聖なものが俗に穢されることの最たる例です。
🔹 6. 「矢を放った悪魔」
- 悪魔の誘惑は、突然ではなく、巧妙で執拗な“意識への働きかけ”として表現されます。
- ここでは「矢」として描かれており、罪への導きがまるで遠くから放たれる攻撃のように魂を射抜くという象徴が用いられています。
- 誘惑とは、外からの暴力ではなく、内面の選択を狂わせる静かな侵食であるという認識です。
part2:「悪魔の誓いと、神の救いの決意」
本文
悪魔はこう言いました。
「人間の受胎の中にこそ、私の力はある。
だから人間は、私のものだ!」
そしてさらにこう思ったのです。
「人間が私に同意するなら、彼らは私と同じ罰を受けることになる。
なぜなら、すべての不義は、全能なる神に反するものだからだ。」
この大いなる欺き手は、自らの心にこう印を刻みました。
「自らの意志で私に従った人間は、神が奪い返すことはできない。」
それゆえ、わたしは深く密やかに思いを巡らせ、人類を贖うために、わたしの御子を遣わすことを決意したのです。
それは、人が再び天のエルサレムに戻れるようにするためでした。
この救いの決意に、いかなる不義も逆らうことはできません。
なぜなら、わたしの御子はこの世に来て、罪を離れ、御子の声に耳を傾け、その生き方を模倣しようとするすべての者を、ご自身のもとへ集めたからです。
わたしは正しく、義なる存在であり、あなたがた人間が知りながら行う悪──
そのような不義を望んではいないのです。
ルシファーも、そして人間も、創造の始まりにおいて、わたしに逆らおうとし、立っていられず、善を離れて悪を選んだのです。
しかし違いがあったのです。
- ルシファーは完全に悪に傾き、善を一切味わおうとせず、ただちに死に落ちました。
- 一方、アダムは善を知り、従順によってそれを受け入れたにもかかわらず、欲望によって悪を望み、不従順によりそれを成し遂げてしまったのです。
このようなことが起こった理由について、あなたにすべてを探ることはできません。
なぜなら、人間には、世界の創造以前に何があったのか、あるいは最後の日の後に何が起こるのかを知る力はないからです。
それを知るのは神だけ。
ただし――
選ばれた者には、神が許す範囲で、その一端が知らされることがあります。
キーワード解説
🔹 1.「人間の受胎にこそ私の力がある」
- これは悪魔の言葉であり、「人間の命の源を支配できれば、その存在全体を手に入れられる」という驕りを示しています。
- この言葉は、人間の欲望や性の営みに働きかけることで、魂までをも奪おうとする戦略を象徴しています。
- ヒルデガルトはここで、性と霊性のつながりの深さを逆説的に描き出しています。
🔹 2. 「人間が自ら同意すれば、罰も共有する」
- 悪魔は、人間が自由意志で堕落を選んだならば、その結果(罰)もまた当然であると主張します。
- これは、人間の選択には霊的な重みがあり、その選択は取り消しがたい結果をもたらすという真理を含んでいます。
- 同時に、これは神ではなく「人間自身が同意した」という責任の所在を浮き彫りにしています。
🔹 3. 「神の救いの決意:御子の派遣」
- この箇所は、神が静かに、しかし確固たる意志をもって“御子を世に遣わす決断”をされた場面です。
- 「密やかな思慮のうちに」という描写は、慈しみと正義の両方を備えた神の深い愛を感じさせます。
- 人間が自ら悪を選んだにもかかわらず、神が救いの手を差し伸べる――これが無償の恵み(grace)なのです。
🔹 4. 「罪を離れ、御子を模倣しようとする者」
- 救いの対象は、“完璧な人”ではなく、罪を悔い、御子の声に耳を傾け、歩みを真似ようとする者たちです。
- 「模倣(imitate)」という語が重要で、これはヒルデガルトの霊性において、従順・愛・犠牲の実践を意味します。
- 救いとは行いの結果ではなく、意志と方向性の選択にあるという信仰的見解です。
🔹 5. 「ルシファーとアダム、それぞれの堕落」
- ルシファーは完全に善を拒絶し、全体として悪に堕ちました。
・一方アダムは、一度は善を味わいながらも、欲望によって悪へと傾いたとされます。 - この比較によって、人間には“選び直す可能性”が残されていることが暗に示されます。
- それでも堕落は堕落であり、知っていて悪を選んだ責任は消えません。
🔹 6. 「世界の始まり以前・終わり以後は、神のみが知る」
- ヒルデガルトはここで、神秘的な領域――時間の始まりと終わり――は、人間の理解を超えていると語ります。
- この姿勢は、「知ろうとするより、神を信頼する」ことの方が信仰者にふさわしいという教えに通じます。
- ただし、神はその一部を「選ばれた者」に啓示することもある、という余地が残されています。
part3:「姦淫と理性の喪失 ― 神の目から見た人間の尊厳」
本文
けれども──
人々が日常的に行っている姦淫(かんいん)は、わたしの目には忌むべきものなのです。
なぜなら、わたしは最初から、人間を──
男と女として──
清く、義なる姿で創ったのであり、邪悪の中に創ったのではないからです。
ですから──
「自分には姦淫する権利がある」と言い、獣のような欲望に従って誰とでも交わる者たちは、わたしの目に値しない存在なのです。
なぜなら、人間に与えられた尊厳と理性の高さを侮り、動物のような本能に身を委ねてしまったからです。
そのような者たちは、尊厳ある存在から堕ちて、自らを獣と同じ次元にしてしまっているのです。
このように生き、なおもその悪の中にとどまろうとする者たちに、災いあれ。
キーワード解説
🔹 1.「姦淫はわたしの目に忌むべきもの」
- ここでの「姦淫(かんいん)」は、単に結婚外の関係だけでなく、
神が定めた目的や節度から逸脱した性的行為全体を指します。 - ヒルデガルトはこの行為を、「神が与えた霊的な制度の冒涜」として、非常に厳しく断じています。
- 神の目から見たとき、性とは命を宿し愛を表現する神聖な行為であるべきなのです。
🔹 2. 「清く義なる姿に創られた人間」
- 人間は、最初から“邪悪さ”の中に創られたのではなく、誠実さと霊的秩序のうちに創られたという前提が強調されます。
- これは、「本来の姿」に立ち返ることが、神の意志に従った生き方であるという教えに通じます。
🔹 3. 「『自分には姦淫する権利がある』と語る者たち」
- こうした人々は、“肉体の自由”を口実にして、神の秩序を否定し、自分の欲望に従うことを正当化しているとされます。
- ヒルデガルトはこれを「偽善」とし、理性という高貴な贈り物を捨て、獣と同じ次元に堕ちていると警告します。
🔹 4. 「動物のような欲望に従って誰とでも交わる」
- ここでは、節度も意図もない衝動的な交わりが、霊的な堕落を象徴するものとして語られます。
- ヒルデガルトの霊性においては、“獣のように生きる”=“神との結びを断ち切る”という意味を持ちます。
- つまり、性とは理性・愛・神との調和の中で行われるべき神聖な営みであり、衝動に任せた行動は、人間の魂を蝕むのです。
🔹 5. 「わたしの目に値しない存在」
- この言葉は非常に重く、神のまなざしから自ら離れてしまうほどの霊的状態を示しています。
- これは“排除”というよりも、自ら神の秩序を拒んだ結果としての「断絶」と捉えるのが適切です。
- ヒルデガルトは、神の秩序に背く者には、内的な滅びが訪れると語っています。
🔹 6. 「災いあれ」
- この終わりの言葉は、旧約聖書の預言者たちが語る“災いの宣言”と響き合います。
- ヒルデガルトはここで、欲望のままに生き、悔い改めようとしない者たちへの深い憐れみと警告を込めています。
- 神は裁く存在であると同時に、悔い改めを待つ慈しみの主でもあるという文脈に置くと、この言葉も「目覚めへの呼びかけ」として響きます。
🌿 まとめ|救われる魂、汚される営み ― 御子の贖いと人間の選択
ヒルデガルトは私たちに、「救いとは何か」「なぜ御子が来られたのか」を問い、
そこから派生する性の倫理・理性・悔い改めの必要性へと踏み込んでいきます。
この2つのメッセージを通して見えてくるのは、人間の弱さに寄り添いつつも、誤魔化しのないまなざしで真理を伝える、神の深い愛と厳しさです。
✨ 浮かび上がるテーマたち
- 🔹 救いは、ただひとつ ―「罪なき御子」の贖い
- 罪のうちに生まれた人間を、肉体を持たぬ天使は救えない。
- 救うことができるのは、神の御子だけ。
- 罪なき肉体を持ち、愛と受難をもってこの世に来た御方によってのみ、魂は悪魔の手から贖われるのです。
- 🔹 自由意志は、魂の帰路を左右する
- 神は、誰をも強制しません。
- 人間が自ら御子を慕い、模倣しようとするとき、天のエルサレムへの道は再び開かれるのです。
- それは、正しさではなく、選び直そうとする心にこそ希望があるということ。
- 🔹 欲望の堕落は、霊的な秩序を崩す
- 神が定めた「性」は、命を紡ぐ神聖な制度。しかし、それが悪魔の囁きによって快楽の道具に変わったとき、その行為は命を創るものではなく、魂を蝕むものとなってしまうのです。
- 🔹 理性を手放したとき、人は“神の像”ではなくなる
- 自分の欲望を「正当化」し、誰とでも交わることを当然とする者は、人間としての尊厳と理性を侮辱するもの。
- そうした生き方に対して、ヒルデガルトは**“わたしの目に値しない”**とう強い神の言葉を伝えます。
- 🔹 それでも、悔い改めの扉は閉じていない
- 「災いあれ」という警告は、破滅の宣言ではなく、目覚めのための鐘の音。
- 今ここで、目を開き、耳を澄ませ、御子の声に応えようとする者に、神の慈しみは決して背を向けることはありません。
✨Vision II:「創造と堕落」に添えられた33のメッセージ
【メッセージ目次一覧】
Session.1 天使の忠誠とルシファーの堕落、地獄の創造
Message 1~3 誇りと忠誠の狭間で
Message 4-6 地獄・堕落・神の秩序
Session.2 地獄の存在、悔い改めの重要性、悪魔の欺瞞、結婚の神聖さ
Message 7-9 悔い改め・欺き・原罪
Message 10-12 誘惑・結婚・創造
Session.3 欲望の制御、近親婚の禁止、キリストによる償いの役割
Message 13 結婚・欲望・悔い改めと救い
Message 14-15 罪なき御子と魂の救い
Message 16-18 神の秩序と血の尊厳についての教え
Session.4 結婚における成熟と秩序、性の倫理、純潔の価値
Message 19-21 神殿の純潔と性の秩序
Message 22-24 貞潔と欲望のはざまで神とつながる道
Session.5 神のまなざしに照らされる人間の自由と責任
Message 25-27 創造の秩序と神の呼びかけ
Message 28-30 人間が試される理由と楽園の真意
Session.6 人間の救済と、謙遜と愛の重要性
Message 31-33 謙遜と愛の力で悪を砕く
※Scivias、またはヒルデガルドについては、こちらをご覧ください。
Scivias ― ヒルデガルトの神秘ヴィジョン集
※Scivias (英語版)原文:コロンビア大学https://www.columbia.edu/itc/english/f2003/client_edit/documents/scivias.html
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