「あなたの言葉は、誰かの心に光を届けていますか?」
言葉は時に鋭く、時に柔らかく、人の魂を揺り動かします。
あなたが放つひと言が、暗闇にいる誰かを照らす灯火になるのです。


Message 13 :なぜ受肉以前の人々には複数の妻が許されたのか
part1:「受肉以前の結婚と、人間の欲望への警告」
本文
けれども、わたしの御子が受肉される以前──
古代の人々の中には、自らの欲望に従って複数の妻を持つ者たちがいました。
というのも、彼らはまだ、わたしの御子による明確な禁令を聞いてはいなかったからです。
御子はこの世に来られたとき、夫と妻の間の正しい結びつきは、アダムとエヴァにおいて最初に示された「生涯を通じた一対の一致」であることを示されたのです。
それは、人間の思いのままに行われるべきものではなく、神への畏れのもとで守られるべきものなのです。
たしかに、肉欲に駆られて姦淫に陥るよりは、教会の知恵に基づいた正しい結婚を選ぶ方が良いのです。
しかし、あなたがた人間はこのことを理解せず、まるで獣のように、欲望に身を委ねてしまっているのです。
ですから、夫婦の間には、正しい信仰と、神の知識への純粋な愛がなければなりません。
そうでなければ、彼らの種(精)は悪魔の技によって汚され、神の怒りによって裁かれる可能性があるのです。
なぜなら──
彼らは互いに噛み合い、傷つけ合い、まるで獣のような乱れた欲望の中で種を蒔いてしまっているからです。
このような関係においては、嫉妬が毒蛇のように彼らを責め立て、神への畏れも、人としての節度もないままに、汚れた種が体内に蓄積されてしまうのです。
そしてしばしば、その歪んだ行いは、神の正しい裁きによって罰せられます。
つまり──
彼らの子どもたちは、手足や健康を欠いた状態で生まれてくることがあるのです。
ただし、わたしがその悔い改めを受け入れ、憐れみによって赦しを示すときは別です。
なぜなら、もし誰かが罪を悔い、心からわたしに呼びかけるならば──
「主よ、私はあなたの前に罪を犯しました」と呻くように祈るならば──
わたしの御子──祭司の中の祭司である御方──は、その悔い改めをわたしに差し出してくださるのです。
キーワード解説
🔹 1.「受肉以前の複数の妻」
- ここでは旧約時代の一夫多妻制が言及されています。
- 神は当初これを容認していたわけではなく、「明確な禁令」がまだ示されていなかったために、人間の側が“欲望による選択”をしていたという構造が示されています。
- 新約以降、イエスによる“神の意志としての結婚観”が明らかにされたとヒルデガルトは読み解いています。
🔹 2. 「アダムとエヴァの結びつき」
- 結婚の理想像として登場するのが、“アダムとエヴァ”の一対。
- これは、人間の意思による関係性ではなく、「神の定め」による一致として強調されています。
- ヒルデガルトにとって、聖なる結びつきは神への畏れと秩序のもとで守られるべきものです。
🔹 3. 「欲望に支配された生き方」
- 「人間の欲望」ではなく、「獣のような欲望」という強い表現が使われています。
- これは、霊性を失った行為が、理性や信仰を無視した“動物的なレベル”まで堕ちてしまうという霊的警告です。
- 欲望を正しく秩序づけることが、霊的成熟の証であるという思想が背景にあります。
🔹 4. 「種が悪魔によって汚される」
- 「種(シード)」=精・命の起源に対する汚染という概念は、ヒルデガルト独特の霊的表現です。
- 神聖な意志なくして放たれた種は、生命の本来の神的秩序から外れ、悪魔的作用の対象となると考えられています。
- ここには、肉体の行為に霊的責任が伴うという深い倫理観が込められています。
🔹 5. 「嫉妬は毒蛇のように責め立てる」
- 結婚が霊的秩序に沿っていないとき、関係の内部で起こる「嫉妬」や「傷つけ合い」が、霊的にも人間関係にも深刻な毒となることを象徴的に示しています。
- この“毒”は霊魂を蝕み、結果として子にまで悪影響を及ぼす可能性があるという警告です。
🔹 6. 「悔い改めと神の憐れみ」
- “私は罪を犯しました、主よ”という呻きは、魂が光に向かって手を差し伸べる霊的ジェスチャーとして描かれます。
- ここでは、人間の肉体的な過ちも、真摯な悔い改めによって赦される道が開かれるという神の慈悲の深さが語られています。
- ヒルデガルトは、神の正義と慈しみのバランスを常に示そうとしています。
part 2:「悔い改めの力と、司祭を通じた救いの道」
本文
罪を悔いながら心からわたしに手を伸ばし、「主よ、私はあなたの前に罪を犯しました」と呻く者がいるならば、わたしの御子──祭司の中の祭司である方が、その悔い改めをわたしの前に差し出し、わたしはその者の悔い改めを受け入れるのです。
それは、御子への愛ゆえです。
また、御子の名のもとに司祭たちに対して差し出された悔い改めは、罪人の魂を清める力を持つのです。
ゆえに──
真実の悔い改めをもって償う者たちは、悪魔の顎から逃れることができます。
悪魔は、神の力という釣り針を呑もうとして、その顎を激しく傷つけた存在であり、今や信仰ある魂たちは、その滅びから抜け出し、救いに至るのです。
それはどのようにして実現するのでしょうか。
祭壇に立つ司祭たちが、わたしの名を呼び求め、人々の告白を受け取り、救いのための癒しの処方を与えるとき、彼らを通して救いがもたらされるのです。
ですから、人々が神の憐れみに与ることを願うのであれば──
さまざまな罪によって、その「種(命の源)」を汚してはなりません。
なぜなら、姦淫や不貞によって精を放つ者たちは、そのようにして生まれた子どもたちを、健やかでない存在としてしまうからです。
では、なぜなのでしょうか。
こうたずねてみなさい──
「泥や糞を混ぜた粘土で、長く保てる器をつくることができるでしょうか?」
同じように、姦淫や不貞によって汚された種から、力強く健やかな子が生まれることはほとんどないのです。
キーワード解説
🔹 1.「祭司の中の祭司」
- これはイエス・キリストを指す表現であり、すべての司祭的行為の究極の模範とされています。
- 悔い改めの祈りは、御子によって神のもとへ差し出され、赦しの通路として働くという信仰理解に基づいています。
- つまり、人間の行動と神の憐れみは、キリストという橋を通じてつながるのです。
🔹 2. 「司祭に対して差し出される悔い改め」
- ヒルデガルトは、悔い改めが個人の心だけでなく、“共同体と聖なる秩序”の中で行われることの重要性を説いています。
- 司祭を通じて行われる悔い改めは、社会的にも霊的にも再生の入り口とされており、神の憐れみと人間の誠実な告白が出会う場と位置づけられています。
🔹 3. 「悪魔の顎から逃れる」
- これは非常に詩的な霊的イメージです。
- 悪魔が神の力(釣り針)を飲み込もうとして自らの顎を傷つけたという表現は、神の正義が悪を制し、信仰者を救う構造を象徴しています。
- 信仰ある魂が悪から解放される瞬間を、力強い戦いの比喩として描いています。
🔹 4. 「種を汚すことの霊的影響」
- 「ヒルデガルトは、精(=命の源)を「神の祝福を宿す器」として捉えています。
- 姦淫や不貞によってそれを汚す行為は、命そのものに不調和と苦しみをもたらすものとされ、霊的にも生理的にも“神の秩序を破る重大な行為”とみなされます。
🔹 5. 「泥や糞を混ぜた粘土」
- これは強烈な比喩であり、不純なものを混ぜて創造しようとする行為の愚かさを示します。
- 純粋な粘土が永続的な器を作るように、聖なる結びと意志によってのみ、健全な生命が育まれるという霊的な真理を視覚的に伝える印象的な表現です。
🔹 6. 「『力強い子が生まれるか?』という問い」
- ここでは、身体的な健やかさだけでなく、霊的な力強さ・倫理的な根源力を意味しています。
- 人間の不完全な行為からは、真の強さは生まれないという警鐘であり、「命の始まり」にこそ信仰と秩序が必要であるというメッセージが込められています。
part 3:「貞潔と徳の道、そして御子の贖いの力」
本文
とはいえ、人間の中には、心の深いところでさまざまに働き、この世と神の前において賢くなっていく者たちも多くいます。
そうした人々によって、天のエルサレムは満たされていくのです。
彼らは、悪徳を捨てて徳を愛し、貞潔と偉大な行いにおいて、わたしの御子を模倣します。
そして自らの肉体のうちに、可能な限り御子の殉教(マルティリウム)を宿して生きていくのです。
また、わたしがある人に子を持たせたくないと望むときには──
その者の精にある「生命の力」を取り除くことによって、母の胎内でそれが凝固することがないようにします。
ちょうど、わたしが正しい裁きによって望むときに、大地から実りを奪うのと同じことです。
あなたは問うかもしれません。
「主よ、なぜあなたは姦淫やそれに類する罪の中から、
子どもが生まれるのをお許しになるのですか?」
わたしの答えはこうです──わたしの裁きは正しいのです。
なぜなら、アダムの堕罪以来、人間の種の中には、本来あるべき“義(ただしさ)”がもはや見出せないからです。
悪魔がその“義”を、果実の味わいによって追い払ってしまったのです。
だからこそ、わたしは御子をこの世に送ったのです。
彼は処女から生まれ、その血には一切の肉的汚れがありませんでした。
それによって、御子は悪魔が人間から奪い去ったものを、その血でもって取り戻されたのです。
キーワード解説
🔹 1.「心の奥でさまざまに働く者たち」
- 人間の内面にある良心や信仰への目覚めを表しています。
- ヒルデガルトは、世俗と神との間で自らを律しようとする魂の成長を“天のエルサレム”の住人として讃えます。
- ここでは、悪を捨て徳に生きることが、神に近づく道であるという明確な方向性が示されます。
🔹 2. 「貞潔と偉大な行いで御子を模倣する」
- 「模倣(imitate)」は、ヒルデガルトの霊性において非常に重要な概念です。
- ただ信じるだけでなく、生き方においてキリストに倣うこと、とくに貞潔と自己犠牲(殉教)を通して御子を体現することが、魂の完成に向かう道とされています。
🔹 3. 「御子の殉教を肉体に宿す」
- この表現は非常に神秘的ですが、苦しみを通して愛を証しする姿勢を意味します。
- 完全な苦行ではなく、日常における信仰的献身を通じて、自らの生を聖なる生贄とする道を指しています。
- これはヒルデガルトの「身体性と霊性の統合」という思想にも通じます。
🔹 4. 「神が子を望まないとき、種を無効にする」
- 生命の誕生は、人間の意志だけではなく、神のご意志と計らいの中で起こるという霊的理解です。
- 神は正義と愛に基づいて、命の源泉を開いたり閉じたりされるお方であると描かれています。
- 同様に、大地の実りを奪うという比喩は、自然界全体が神の秩序に従って動いていることを示しています。
🔹 5. 「なぜ神は姦淫の子の誕生を許されるのか?」
- 非常に重い問いに対して、ヒルデガルトは「人間の種の中には義が失われている」という視点から答えます。
- これは、アダムの堕罪以降、人間の霊的本質が損なわれているという原罪の神学に根差した考えです。
- その上で、“なぜ?”の問いに対して“それでも神は正しい”と応答する態度を示します。
🔹 6. 「御子の血による回復」
- 堕落した人間の状態を回復するために、穢れなき御子が処女から生まれたという贖いの核心が語られます。
- “血に肉的汚れがない”という表現は、完全な聖性と神性の象徴であり、それによって、悪魔に奪われた魂を取り戻す救いの道が開かれたのです。
🔹 7. 「奪われたものを、御子が取り戻す」
- ヒルデガルトはこのメッセージの最後で、「御子が悪魔から人類を取り戻した」という霊的ドラマを語っています。
- これは、アダムの堕罪によって人間の中から義(ただしさ)が追い払われ、神とのつながりが失われてしまったという背景に対して、御子がその失われたものを血によって“回復した”という流れです。
- 原文には「spoils(戦利品)」という表現が使われており、これは、悪魔が奪った“神の子ら”を、御子が取り返したという意味合いで捉えられます。
- つまり私たちは、かつて失われ、しかしキリストの愛によって取り戻された存在なのです。
- この比喩は、救いとは“神の力による奪還”であり、御子の血はそのために流されたという壮大な神秘を語っています。
- ヒルデガルトはここで、救済の物語を戦いではなく、“愛による奪還”として描いているのです。
🌿 まとめ|命と結びの神聖さ ― 欲望の歴史から、悔い改めと救いへ
ヒルデガルト『Scivias』の中でも特に重く深い霊的教えが込められた啓示です。
ここでは、人間の性と結婚、命の創造、悔い改め、そして御子キリストによる贖いまでが壮大なスケールで語られます。
テーマは単なる結婚倫理ではありません。
それは、神が創られた命の秩序と霊的責任を、わたしたち一人ひとりがどう受け止めるかという問いでもあります。
✨ 浮かび上がるテーマたち
- 🔹 神なき結びは、やがて魂を引き裂く
- 人間が欲望のままに関係を築くとき、そこには神の秩序も祝福も存在しません。
- 愛のない交わりは、獣のような衝動へと堕し、種(いのち)は汚され、心は荒み、子へと連鎖していくのです。
- 🔹 悔い改めの手は、神のもとへ届く
- けれども、たとえ過ちを犯したとしても――
「主よ、私はあなたの前に罪を犯しました」と、心から呼びかける声は、御子によって神へと届けられます。 - 悔い改めを通じて、悪魔の顎から逃れ、救いの道へと歩み直すことができるのです。
- けれども、たとえ過ちを犯したとしても――
- 🔹 命を創るということは、神との共同作業
- ヒルデガルトは、命を宿すという行為を「神の創造の力に参与する聖なる行為」として描きます。
- だからこそ、そのはじまりである「結び」と「種(精)」は、神の前に純粋でなければならない。
- 命の源を汚せば、その結果もまた苦しみを生むのです。
- 🔹 悪から奪い返されたもの、それがわたしたち
- アダムの堕落によって人間の種から義が失われ、悪魔に“戦利品”として奪われた人類。
- けれども神は御子を処女から遣わし、血の清さによってその戦利品を取り戻されました。
- これは、全人類のための回復と贖いの物語なのです。
✨Vision II:「創造と堕落」に添えられた33のメッセージ
【メッセージ目次一覧】
Session.1 天使の忠誠とルシファーの堕落、地獄の創造
Message 1~3 誇りと忠誠の狭間で
Message 4-6 地獄・堕落・神の秩序
Session.2 地獄の存在、悔い改めの重要性、悪魔の欺瞞、結婚の神聖さ
Message 7-9 悔い改め・欺き・原罪
Message 10-12 誘惑・結婚・創造
Session.3 欲望の制御、近親婚の禁止、キリストによる償いの役割
Message 13 結婚・欲望・悔い改めと救い
Message 14-15 罪なき御子と魂の救い
Message 16-18 神の秩序と血の尊厳についての教え
Session.4 結婚における成熟と秩序、性の倫理、純潔の価値
Message 19-21 神殿の純潔と性の秩序
Message 22-24 貞潔と欲望のはざまで神とつながる道
Session.5 神のまなざしに照らされる人間の自由と責任
Message 25-27 創造の秩序と神の呼びかけ
Message 28-30 人間が試される理由と楽園の真意
Session.6 人間の救済と、謙遜と愛の重要性
Message 31-33 謙遜と愛の力で悪を砕く
※Scivias、またはヒルデガルドについては、こちらをご覧ください。
Scivias ― ヒルデガルトの神秘ヴィジョン集
※Scivias (英語版)原文:コロンビア大学https://www.columbia.edu/itc/english/f2003/client_edit/documents/scivias.html
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